唐長十一代目

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唐長 十一代目の仕事場

仕事場

唐紙の仕事に携わって、いつの間にか50年を越える。自分自身もそれほど経ったのかと驚いている。もうすぐ唐長創業400年を数える。先代の父から唐長を引き継いで2年ほどして、小さな自分の仕事場を作った。まだまだ未熟なころで少々早すぎではと思ったが、ともかくおぼつかない門出であった。あれから50年が経っても雑雑とした仕事場は今も当時と殆ど変わらない。一方、ここでいろんな事を経験した。思い出は限りなくある。その中でふと思い出したことや、気づいたことを画像を交えて、時には語り調になると思うが率直に述べていこうと思う。

唐長 十一代目
唐長 十一代目の仕事台

天保時代の唐紙見本帳

 もう何年も前のこと、知り合いの古書店から連絡があって、「江戸時代の唐紙見本帳が見つかった」と聞いて急いでお店に出向いて確認したが、確かにそうであった。それも家の名前である、千田としっかりと太字で書いてあった。唐長には大正時代の手製で綴じた見本帳は数点あるが、江戸時代のものは手元になかったので、すぐに交渉をして、少々高くついたが折り合いがついて手に入れることができた。これもしっかりした製本ではなく、当時に出来た唐紙の切れ端を揃えて綴じた体裁をしている。恐らくは顧客に貸したまま、返却せずにそのままになったのだと思う。1枚ずつめくると緑の絵の具引きしたものが多く、文様もお寺によく使うものが多いようで、恐らくは寺院向けの唐紙資料ではと思われる。いずれにしても貴重な唐紙資料なので、以後大切に保存している。

 

唐長 十一代目
天保時代の唐紙見本帳表紙
唐長 十一代目
天保時代の唐紙見本帳裏表紙
唐長 十一代目
天保時代の唐紙見本帳中表紙
唐長 十一代目
天保時代の唐紙見本帳にある唐紙

唐紙に使う絵具

唐紙づくりに使う絵具はとてもシンプルだ。いわゆる3原色、赤青黄の色を混ぜ合わせて適う色を見つけるのである。それに

唐紙は真っ黒な墨色と白の無彩色の2色も加える。厳密に言えば、この5色で全ての色を作り出す。これら絵具の材質は赤、青、黄の3色は顔料で染料よりもかなり粒が粗い。顔料は別名、泥絵具と言って、もともとは色土を使って絵具にしたようだ。そして墨は蝋燭などの煤を膠で練ったもので、白は牡蠣の貝殻を粉にしたもので胡粉と呼ぶ。これら調合された絵具に米糊や膠を混ぜて剥落を防ぐ。そしてもう一つ欠かせない糊に海草の布海苔も加える。布海苔については次回に詳しく述べたい。

唐長 十一代目
唐紙製作に使う3原色の絵の具

唐紙づくりに使う板木

唐長の板木蔵には650種の板木がぎっしりと収蔵されている。その内、半分以上が江戸時代に彫られたものだ。それらを今も大切に使っているのだが、これほど古いものが残っており、それも現在も使い続けているのは極めて珍しいと思う。これは家業の小規模スタイルで続けて来たことと、数多くの板木を持ち得たこと、そして何よりも板木にとって技法が優しいのだ。それは手の代わりになる、フルイという布を張った団扇状の簡単な道具に刷毛で絵具を塗り、板木に付けて、絵具の付いた板木に和紙を置き、手のひらで優しく写しとるという専ら手だけの唐紙づくりが幸いにも板木を長持ちさせた。

写真の板木は大きさが三種あるが、時代とともに漉ける和紙の大きさが変わり、小さい板木の五三の桐文は江戸時代に彫られて、中の六条笹文の大きさは明治、大正期が多く、大の観世水文の大きな板木は昭和時代に彫られたものが多い。この観世水文の板木の色が赤いのは朱漆を多く使った故である。話は尽きないが、また続きを持ちたい。

唐長 十一代目
唐長の板木

絵の具の調合に入れる糊

唐紙に使う調合された絵の具には当然、糊を加えないといけない。昔から布海苔は唐紙作りには欠かせないが布海苔の材料は海の海藻から採れる。これを海岸に天日干しで乾燥すると写真のようなランダムな網状のものが出来上がる。この布海苔を使えるようにするには半日ほど水に浸して戻すとヌルヌルとした粗い粘液になるので、これを鍋で充分に溶けるまで弱火で煮るのだが、頻繁にかき混ぜないとすぐに焦げ付く。ほぼ、つきっきりの布海苔炊きだ。炊き上がったら布などで濾して小さなゴミなどを取り除いて出来上がり。しゃもじですくうとやや色を帯びた透明な粘液になる。そして写真のプラスチックの容器にある白い糊は米から出来た澱粉糊で書いてあるようにヒメノリとも言う。語源はあるのだろうが分からない。これを使うのは布海苔は万能であるが、やや接着力が弱いので補強剤に使う。だが強いからと言って多く入れない方がいい。それはガサガサの唐紙になって駄目である。それと布海苔もそうであるが天然のものはまちまちなので割合で測れない。大事なのは繰り返しで経験を積んだ直感力でほどよい加減を見つけるしかない。

因みに写真の銅鍋はいつ頃のものなのか?唐紙に携わって50年、その前の先代の父親がずっと使っていたようだ。

唐紙道具は全般に長持ちしている。やはり使い慣れた道具はよく馴染んで仕事がはかどる。一筋の仕事は何かにつけ、いい仕事ができる環境が備わっている。

 

唐長 十一代目
唐紙製作に使う糊

唐紙づくりに欠かせない刷毛

唐紙づくりには和紙が欠かせない。そのまま使うことも多いが、時には和紙を刷毛染めする。それは唐紙が地色と柄色の2色の組み合わせが基本で、唐紙を使う場所や用途によっていろいろと工夫するので和紙自体に色を付ける方が良い場合がある。唐長は殆ど誂え品が多くて、その都度に顧客と綿密な打ち合わせをして結果、和紙を刷毛染めするなど、顧客のためにオリジナルな唐紙を作ることを基本としている。写真にある刷毛は大きさがいろいろであるが、例えば7の印がある刷毛は横幅が7寸、即ち21cmあって専ら、襖判の鳥の子と呼ぶ大きな和紙を刷毛染めするのに使う。そして板木に絵の具を付ける際にフルイと言うガーゼを張った道具にまず、絵の具を刷毛で

塗って、それを板木に付ける間接的な手法であるが、その際の刷毛は15cm幅の小刷毛を使う。刷毛は工夫によって大小を使い分けるが大事な道具である。

 

唐長 十一代目
和紙を染める刷毛
 唐長
商標番号4583125号